■アカハネオンブバッタ Atractomorpha sinensis sinensisは日本 では南西諸島(トカラ列島〜与那国島)に分布し、国外では中国、韓国、台湾、ハワイ(移入)から知られています。琉球列島や台湾では、四季を通じて成虫と 幼虫が混在していたりすることから、通年発生しているのではないかと考えられています。これに対して在来のオンブバッタA. lataは国内は北海道から九州、沖縄(先島諸島からも記録はあるが実態は不明)、海外では韓国、中国に分布します。
 
■アカハネオンブバッタの近畿地方での化性(年に何回成虫が出現するのか)は現在調査中ですが、今のところ近畿地方では5月上〜中旬に孵化し、初夏には羽化して成虫になることが分かっています。夏から秋にかけて第2あるいは第3世代と考えられる個体が見られます。

■移入したアカハネオンブバッタの問題点
 もともと生息しない生き物がある場所に侵入すると、それまでそこで暮らしていた生き物に多少なりとも影響を与えることは容易に想像できます。もとからい た生き物を食べてしまったり、エサ、産卵場所、隠れ家などをめぐって競争が起こったり、寄生虫を移してしまったりすることもあります。特に生活の様子が似ている生き物同士では影響は大きくなると考えられています。上で述べたように本州にはオンブバッタという種が昔から生息しています。アカハネが侵入して両 者が見られる場所では、種間の交尾(アカハネ♂ ✕ オンブ♀、アカハネ♀ ✕ オンブ♂の両方)がしばしば観察されています。種間の交尾の結果、交雑個体が生じるかは現在調査中ですが、オンブバッタは交尾の時以外もオスがメスに乗っ ている時間が長く、種内の正常な交尾が妨げられる可能性もあります。

異種間の交尾(オンブバッタ♂ ✕ アカハネ♀)


■調べていること
 2012年の調査で、すでに湾岸地域を中心に比較的広い範囲に分布が拡がっていることが明らかになりました。その後も内陸に向けて徐々に定着域を拡げているようです。現在分布状況と分布域拡大の様子を調べています。またDNAの塩基配列に注目して、海外の材料を加えて解析することで、大阪のアカハネオンブバッタがどこからやってきたのかを調べています。